2009年05月26日

ダメ曲その11: Scatman John

2000年代のベストソング100みたいな企画を考え中。
考えてると言ってもまだ2009年が半年残ってるし、
リスト化とかを進めてるわけでもなくぼんやり考えてるだけなので
結局いつまでもやらない可能性大だけど、
もしつつがなく2000年代明けからすぐに始まった場合、
今やってる「00'sダメヒット伝」とベストソングと、
2000年代総括企画が2つ同時進行してしまう。
それに、この2つの両方に当てはまる曲ってたぶん結構あるのが困る。
それは「ダメヒット」の定義に、相反する2つの要素をもつ2曲
―例えば「世間では名曲とされてるけど僕はクソ曲だと思ってる」と
「世間的にはクソ曲だけど僕はすごく好き」とか―
のどっちも当てはまってしまうのが理由。

それなら、ということで、今回からダメヒットの方は
「2000年代」の縛りを無くしてしまおうかと。
無くしたところで60年代のダメヒットとか知らないのであんまり
取り上げる曲のレンジは変わらない気がしますが、
90年代には名だたる"90's Trash"がザクザクあるので今回はそこから。



=====

Scatmans World
Scatman John - Scatman [Ski-Ba-Bop-Ba-Dop-Bop]
#2 UK, #60 US, #36 JP (1994) (1995/JP)
from "Scatman's World" (1995)






90's Trashってたまたま僕が見かけただけで一般的な言葉じゃないのかもしれないけど、
僕が見た時にこの言葉が指示していたのはいわゆるユーロ系ダンスポップ。
まあ色々と錚々たるゲテモノメンツの揃う世界ですが、
その中でも日本でのセールスがMe & Myに次いで高かった(たぶん)のがScatman John。
アルバム確か150万枚とか売れてたんじゃなかったか。
わけのわからないおっさんがゲテモノユーロポップに合わせて歌ったCDが
安室のこの間のベストと同じくらい売れたというのは恐ろしいことです。

そしてその数年後から今に至るまでBOOK OFF100円コーナー常連の座へ。
昔、僕があるCDを新品80円で見つけたのでそれが好きな知人に報告したら、
「80円って、Scatman John以下じゃないか!」と嘆いていたことがあった。
Scatman Johnとは、世間にとって、そういう存在である。
ヨーロッパの女性ヴォーカルが主流だったこのジャンルにおいて
アメリカ出身の中年男性は珍しい存在でしたが、
それもイロモノ感を増幅させはすれども、まあそれだけのこと。

しかし、"スキャット"というのがジャズの歌唱法のことであり、
もともと彼自身ジャズの世界で生きてきたミュージシャンである、
というエピソード・知識を知ればちょっと印象が変わってくるはず。
そして彼が長年吃音に悩まされてきたこと、
彼のスキャットはその吃音を逆手にとったものであること、
この曲の歌詞は吃音を克服した彼が社会的弱者に向けて送り出した
エールになっている、というところまで辿り着くと
とてもこの曲のことを「90年代のクズ」では片付けられなくなってくる。


自らを生涯苦しめてきたコンプレックスを逆に武器にして、
自らを救ってくれた音楽の世界で、今度は自身が表現者として
世界的な成功を収める。それも、齢50を過ぎてから。


こんなカッコいいサクセスストーリーがあるか。
"If the scatman can do it,so can you."
この曲のラップに心底驚き、本気で励まされた吃音者はきっと世界中にいるだろう。
(これ何となく日本限定っぽい雰囲気だけど欧州でも大ヒットしてます)
こういう話まで踏まえてから聴くと、
ルイジアナとサッチモをレペゼンした後年のヒット「Everybody Jam!」(96年)も
まるで印象が変わってやたら感動的な曲に思えてくる。
「Scatman」が弱者への応援歌(兼、吃音に対する自らの勝利宣言)なら、
「Everybody Jam!」は自らを高めてくれた音楽に対する彼の真摯な感謝を込めた曲だったんだろう。

「Scatman」のデビューヒットからわずか5年後の99年、
57歳の若さで世を去ったScatman John。
その死が特別惜しまれるでもなく、ウルトラスキャットマンだのプッチンプリンだの
色々おもちゃにされたあげく後世からの評価もまるで残らなかった。
それでも、彼の人生、少なくとも最後の5年間は天晴れだったんじゃないでしょうか。
この曲や彼に対する世間の「イロモノ」な評価を悲しい、不当だ、とは言わないけど、
実はこういう側面があったことは、もうちょっと知られててもいいと思う。
ま、知ってる人は結構知ってるみたいですが。


http://www.youtube.com/watch?v=qILekn6jDho
posted by Skedge at 00:00| Comment(6) | ダメヒット伝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
そんな裏話があるとは知りませんでした!
ならば余計にバックトラックにはもう少し気を配って欲しかったとも思いますが(笑)

この4年後にFatboy Slimの“Rockafeller Skank”が大ヒットするわけですが、FM中心でヒット曲をチェックするようなライトなリスナーにとっては、「Right Now,Funk Soul Brother〜」っていうあの声って、スキャットマンと同様"Fatboy Slimって人が歌ってる"と思ってるような気がします。
Posted by dj mizuta at 2009年05月27日 10:41
>dj mizutaさん

そんな裏話が!って思ってもらえたなら本望です。
この記事は僕の目から鱗体験をそのまま書いてるだけですけどね(笑)
と言っても、これ日本盤ライナーにも書いてあるみたいです。
確かライナーにも、こういう音楽を選んだことで白眼視されることにも自覚的だったとか書いてあった気が。

本記事の中に入れ損ねたのですが、吃音者のNPOが行なったインタビューを読むと非常にまじめに音楽と向き合っていた人柄が読み取れます。
http://www2m.biglobe.ne.jp/~genyukai/scatman.html
「もはや私は吃音の犠牲者ではありません」という誇らしげな一言がとてもざくっと来ます。

>バックトラックにはもう少し気を
…配って、もっと「真っ当な」音楽にしてたら感動のストーリーとしてまるで評価が変わったかもしれませんね、ええ。ただそれだと今度は安っぽくTVで特集されて猪八戒の号泣シーンとかを見せつけられたりされかねないので、それはそれでいかがなものかと思います。「ロック」や「バラード」であることが名曲の条件になってるような風潮が僕は大嫌いです。

ライトなリスナーにとっては、ただのおもろいおっさんでしかなかった、でいいと思うんですよ。何も考えずに楽しめてこそのポップ音楽。ただFatboy Slimの場合はライトな消費のされ方をしても彼が何者であるかを分かってる人もちゃんといるのに対して、Scatmanは(ライトリスナーとの比率で言うと)たぶん1%以下じゃないか、というのが彼の、というかこのジャンル全体の不幸ではないでしょうか。
Posted by Skedge at 2009年05月27日 13:17
自分はこの話、去年知りました。

きっかけはコレ↓
http://www.youtube.com/watch?v=VTSgu6R4NJk

これ見た後、なんとなくスキャットマンのヒット聴いたり、吃音に関してとかネットで読んでましたね。
Posted by tippee at 2009年05月28日 05:54
>tippeeさん

http://www.youtube.com/watch?v=VTSgu6R4NJk
な ん じ ゃ こ れ

今時Scatmanをネタにするなんて!(←お前もだ)
「ジンギスカン」とか「Bad」(マイコーの)の空耳漫才やって「面白くなかったわけじゃないけどネタが古過ぎる」とか評されてたおっさんグループ見たな昔。
Posted by Skedge at 2009年05月29日 02:04
ますます「ダメ曲」という言葉のイメージが合わなくなってくる記事ですね(笑)

>「ロック」や「バラード」であることが名曲の条件〜
この一文にはすごく共感します。(特に日本では)「ロック」の分野で語れないとほとんどの場合見向きもされませんし(Pet Shop Boysが有りでTake Thatが無しなのは何故なんでしょう?)。Scatmanの例を見ずとも「アップテンポ」の「ダンスポップ」でも強く心を動かされる名曲はありますよね。

Scatmanの話は何年か前にTV番組で特集(「かつて一世を風靡したScatmanの知られざる姿」みたいな)をやっていたのを見た覚えがあります。

それにしても天国のScatmanもまさか2008年にもなって自分の曲が韓国のアイドルグループにサンプリングされるとは想像もしていなかったでしょう…。
Big Bang/Oh, Ah, Oh
http://www.youtube.com/watch?v=Xy9CCUbhJJM
つい最近耳にしたばかりなので、Skedgeさんのタイミングの良さにはいつも驚かされます(笑)
Posted by papaya at 2009年06月04日 02:12
いいんですよ、このコーナーは「世間にダメヒットだと思われてる曲の再評価」も兼ねてるので(笑)。

>「アップテンポ」の「ダンスポップ」でも心を動かされる…
もっと言ってしまえば、「心動かされる感動のバラード」と、「なーんも考えないでいいひたすら楽しいだけのダンスポップ」は何故等価では無いんでしょう?…と書いておいて等価はさすがにないですね、とも書くのが僕ですが(笑)、それにしても後者はあまりにも低く見られ過ぎです。

それからPet Shop Boysが「ロック」的にアリ、という意味では、EminemもChemical Brothersも「ロック」なんですよね。「ロック」(的な耳でも聞ける)だから評価してるんじゃなくて、持ちあげたいから無理やり「ロック」に括ってるだけじゃん。「ロックはあらゆる大衆音楽の礎になってるからいいのダ!」というならTake Thatも「ロック」ですしねえ。

>Big Bang/Oh, Ah, Oh
な、なんという…。Big Bangって最近w-inds.と共演してた人(達?)ですよねたぶん。きっと韓国版「マイアヒライフ」なんだなーということにしておきますw Eminemも「ドゥビドゥビ」サンプリングして復活したら褒めたのに。
Posted by Skedge at 2009年06月05日 03:31
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