2011年01月11日

Albums Of 2010 GC Choice #2

Aphrodite
#2 Kylie Minogue "Aphrodite" (Parlophone)



オーストラリアの誇るポップ・クイーンの、原点回帰、と見せかけたアルバム。


そもそも「エレクトロ+R&B」なんて図式、彼女は『Fever』(9年前!)や『Body Language』で彼女なりの完成形を既に提示していたので、世の中がこんなことになっとろうとそこをさらに追及する必要も意思も無かったんでしょう。周りがエレクトロだのダンスミュージックだのこんなに言い出すはるか昔、2003〜2004年くらいの時点でRadio Slave、Alter Ego、Myloといったとんでもないリミキサー人選をかましていた人です。MadonnaやLady GaGaほどは目立つ存在ではないのできちんと評価している人がこと日本やアメリカでは少ないですが、アイドル/ポップ・アクトとしてのKylieの先見の明、目の付けどころの鋭さは同業他者の軽く数年先を行っています。僕がKylieを好きなのは単純に曲が好きな以上に、明確なコンセプトを持って活動を続ける姿勢に心打たれているからです。そうでなければ僕の中のKylieはUSリスナーにとってと同じく『Fever』で止まっていたはず。


そんな彼女(と彼女をずっと支え続けてきているであろう一流のブレーンたち)が、エレクトロニックな音がチャートを支配する今提示する「ダンスポップ」の形とは何か。

正直、先行シングル「All The Lovers」の気の抜けたサウンドと、ゲイのファンに色目を使いすぎた気色悪いビデオを見たときはガッカリした。当初はリミキサーがCalvin HarrisやDavid Guettaら既に評価を確立したビッグネームばかりになるとの情報もあり(どうもガセだかポシャっただかしたみたいですが)、もうシーンのトレンドを鋭く切り取る「イケてるカイリー」は見られないんだと悲しくなった。


が。
「シーンのトレンドを鋭く切り取る」ことをあえて放棄したような今回の路線が、アルバム全体ふたを開けてみたら全く以って吉と出ているじゃないですか!そうだよ!こんなに安いダンスものが溢れかえるようになっちゃった今のシーンに切り取るべきところなんか最初からなかったんだよ!

アルバム全体の指揮を取るのはStuart Price。Madonnaの名盤『Confessions On A Dance Floor』を任されて一躍セレブ御用達になった元赤毛の王子様、ということでマッジとの比較は避けられないところなのですが、僕当時から『Confessions〜』って嫌いでして。シングルとしては「Hung Up」も「Sorry」も「Get Together」も「Jump」も全部好きだけど、ああいう突破力のある曲で埋め尽くされたアルバムはマッジの「47歳(当時)になってもイケてるアタシ自慢」が延々続く感じですげー疲れるんですよ。

彼女の遺伝子を受け継ぐGaGa、そのコピーキャットのKe$ha、あるいはFergieとかも入れちゃっていいと思うんだけど、アメリカの女性ポップアクトってなんかどいつもこいつも「男の精気吸って生きてます」みたいな雰囲気がほとばしってて(マッジは本当にそうでしょうけどね。ガイ・リッチーって今でもちゃんと生きてるんですか?)、存在感あってカッコいいんだけどあんまり真剣に向き合うとこっちがヘナヘナになるじゃないですか。全員タチかお前ら。みたいな。


そこでやっぱりKylieなんですよ。ビジュアル的な観点から僕の好きなKylieを力説すると、彼女が一番魅力的なのは「Love At First Sight」での溌剌とした笑顔であったり、ベビーピンクのシャツで街を闊歩する「Come Into My World」でのビデオであったり。「大人の女性にしか出せないかわいさ」が彼女のアイコンとしての一番の魅力だと思っていて(だから僕は「Can't Get You Out Of My Head」とのエログロっぽい姿や、ライヴで羽根飾り付けてマッチョなダンサーとABBAを歌い踊る姿なんかはあまり好きじゃありません)、今回のアルバムではそこがかつてないほど上手く引き出されている。

Stuart Priceは、Les Rythmes DigitalesやZoot Womanでの活動からも分かるように元々エレポップ〜ニューウェイヴ属性の人。『Confessions〜』でこそドンドコした音をやってましたが、ああいうUSアクト向きの、ハウスやヒップホップっぽいドンシャリ感覚の人では本来ないはずなんですよ。もっとこう「ピッコピコ」だったり「ほへ〜ん」だったりする方が絶対好き。このアルバムでもそういう中音域を強調した浮遊感あふれる音作りを志向していて、それがKylieの自然体な魅力にものすごくマッチしている。それ考えると「All The Lovers」ってアルバムの先行シングルとしては間違ったチョイスじゃなかったんだな、と思うんだけどあれがアルバム12曲中一番つまらない曲です。


ここまで曲の粒がそろい、テンションの上げ下げも含めたカラーの付け方がばっちり決まった(中盤で一旦スローダウンするんですよこのアルバム。KeaneのTim Rice-Oxley作の隠れ名曲「Everything Is Beautiful」が絶妙のタイミングで流れる)アルバムは、こと「ユーロ・ダンス」というカテゴリーではこれ以上のものは作れないんじゃないかという完成度。シングルが弱くていまいち印象に残らないし後続シングルのビデオも相変わらずキモかったりして気付きにくいかもしれませんが、アルバムとしては『Fever』と同等かひょっとしたらそれ以上じゃないかという傑作です。原点回帰どころじゃありません、これはこれで他の誰もまだ到達してない高みに一番乗りしてますよ。



ひとつ文句をつけるなら、すごい完成度とは言ったものの肩の力を抜いて楽しめるダンスポップ作品なので、こんな仰々しいジャケ(すげー綺麗だけど)やタイトルじゃなくてこういうの↓が良かったなー。これで御年42歳。50になった時に確実に『Believe』のときのCherや『Confessions〜』のMadonnaとは違う価値観を世に示してくれるよ、この人は。



I Believe In You.jpg
ベスト盤からの新曲だった「I Believe In You」のジャケ。
僕はこのリミックスでMyloの存在を知りました。
言っとくけど「Drop The Pressure」が全英チャートでヒットした直後くらいのタイミングだぞこれ。
posted by Skedge at 00:01| Comment(0) | 年間ベスト選考 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。