2015年12月29日

10 Albums Of 2015 GC Choice

毎度。
今年から年間ベストは年が明ける前に書くぞ!と決心したので
まずはアルバム部門から。
作品によって文の量が違うのは調節する気がなかったからだ!
シングル部門はまあ明後日くらいには。








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#1 Disclosure "Caracal" (PMR / Island)


sophomore jinxというのを特別信じてる方ではないんだけど、それを抜きしても実はあんまり期待はしてなかったDisclosureの2作目。なにせ1stが出来過ぎていたし、それであれだけ売れてしまった以上まだUKガラージがどうのこうの言ってはいられないだろう、って。発売に当たってアナウンスされたゲストは一気にメジャーな方々が増えたし、UKガラージ出のポップスターが「メジャー」に合わせようとするとどうなるか、というのはCraig DavidやKaty Bで既に見てきてしまったくらいには歳も取った。ついでに言うと最初のシングル2曲(「Bang That」と「Holding On」)も全然好きじゃなかったし。てか気に入ったネコの品種がアルバムタイトルって適当すぎるだろ、みたいな。

結果的にUKガラージ感は予想通りやや後退して「メジャー化」したものの、引き換えに手にしたこのクールで陰鬱な色艶ときたらどうですか。The Weekndを起用したオープニングにして事実上のタイトルトラック(歌詞中に"caracal"という単語が登場する)「Nocturnal」が本人の『Beauty Behind The Madness』のどの曲よりも出来がいい、という時点でもうこのアルバムの年間1位は決まってしまったようなものだった。全体的にベタっとしたビートの感触がとにかく艶めかしい。彼らが火付け役になり、今あの時よりもかなり陳腐な形になってより巨大化、チャートを席巻するようになったディープハウスブームと距離を取りつつ、それでも「Omen」や「Hourglass」で聞こえるベースの使い方は間違いなくフューチャーガラージのさらに先を行った彼らなりの進化形。今年はこのアルバムだけ別次元でしたわ。






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#2 K. Michelle "Anybody Wanna Buy A Heart?" (Atlantic)


こういう「本格派ソウルシンガー」のアルバムって得てして大した起伏のないつまらない印象になることが多くて、1〜2曲気に入った曲があってもこうして年間ベストに入れることってあまりなかったりする。K. Michelleは1stもきちんと買って聴いたんだけどその感想がまさに上記のとおりで、「V.S.O.P.」だけ突出して好きだったんだけどアルバム全体の印象は特に残ってなかったからこの2ndはリリースされて後しばらくスルーしていた。というか出たこと自体いまいち知らずにいた。そんなに頻繁に話題になる人でもないし。そしたら2014年の年間ベストにとある方が選んでいて(12月というギリギリのタイミングで出たやつだけどその人は対象に含めていた)、それで改めて聞いてみたら貴女。

こんなに、こんなに歌の上手い人でしたっけ…。

いや、上手かったんですよ最初の最初から。なにせR. Kelly御大にフックアップされたのが業界入りのきっかけなんだから。けどなんだろうこの「歌ぢから」は。声を聞いてるだけでめちゃくちゃ幸せ。圧倒される。前回と何が違うんだろう。オーセンティックなR&B路線はそのまま、特に大きな変更はない。もしかしたらヴォーカルがより前面に出るミックスでもしてるのかな、とは思う。それくらい彼女の声、声、声がひたすら耳に残る。あとはとにかく曲の良さ。今回はそこまで突出した曲がない代わりに驚くほど粒が揃っていて、ここまで良曲揃いのR&BアルバムはMariah Careyの『The Emancipation Of Mimi』以来ではないかと思うほど。こんなに「タネも仕掛けもない」、歌詞の意味もシンガーの経歴も分からなくてもただただ曲とヴォーカルの素晴らしさだけで魅了してくれるアルバム、ちょっと記憶にない。





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#3 Jamie xx "In Colour" (Young Turks)


twitterなんかで僕個人が観測してた範囲の話ではあるんだけど、今年もっともいろんなジャンルの音楽クラスタに刺さったアルバムではないかなあと。僕別にThe xx聴いたことなかったけどこれは「分かった」し、本来こういうのが好きそうな人以外にも結構いろんな人が話題に出してて興味深く思っていた。実際どのメディアでもシングル、アルバムともに上位に置いてるし、「ロック、R&B/ヒップホップ、エレクトロの、インディーを軸にした融合」という2010年代のトレンドを統合するような立ち位置の作品だと思う。その意味では、ダンスカルチャーの歴史においてブレイクビーツからハウス、ニューディスコ、エレクトロ、チルアウトまでを2004年時点で一点に集約してみせたMyloの『Destroy Rock & Roll』や、同じく2007年時点でのアーバンミュージックの見本市のような作りだったRihannaの『Good Girl Gone Bad』に似た感触がある。

ただこっちは影響を及ぼす範囲がほとんどポップミュージックの全ジャンル。そもそもこのアルバム以前にJamie xxという人が、The xxというバンドが、ここ数年の音像の傾向を作ってきたんだという話もあるけど(言ってたのは澤田太陽さん)、バンドの方は実はきちんと聞いたことがないので置いておくにしても、このアルバムが吸収してひとまとめにした世界の広いこと。こういうアルバムは向こう数年のシーンのトレンドを映し出す試金石でもある。なにぶんインディーベースなので、万人から見て分かりやすい影響力があるとは言えないけど、「2010年代中盤のサウンドってこうだった」という良質なサンプルとして10年後にさらなる真価が発見される日が来ると思う。






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#4 J. Cole "2014 Forest Drive" (Dreamville / Roc Nation / Columbia)


去年の暮れギリギリに出て、その時は2014年の年間1位にしようかとも思ったんだけどさすがに全然聴きこめてなかったから2015年分に繰り越すことにしてなんだかんだで4位。「Work Out」のデビューヒットを他ならぬ憧れのラッパーNasに批判され、セールスとセルアウトの狭間で悩み抜きながら辿りついたのは、シングルヒットなしで30万枚超を売り上げて初登場1位、というそれこそNasのようなヒット形態。このサクセスストーリーに全俺が泣いた。リリース当初は気の早いアーバン系メディアが2014年の年間ベストに選んでたところもあったと記憶してるけど、1年経つうちにDrakeのミックステープやKendrick Lamarの歴史的傑作に完全にかき消された…と思いきやJanetの復活作「No Sleeep」の客演に抜擢されたり、今になってこのアルバムから「No Role Modelz」がシングルヒットするなど地味ながら案外存在感を保ったまま走り切りました。謝辞をそのまま曲にしてしまった14分にも及ぶラストの大曲「Note To Self」だってKendrickの架空2Pac対談なんて魔球さえなけりゃより多くの人の記憶に残ったはずだし、ほぼ全曲自作してしまうトラックメーカーとしてのセンスももっと評価されていい。ハイ・ファイ・セットなんてどこで見つけたんだよ。






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#5 Kendrick Lamar "To Pimp A Butterfly" (Top Dawg / Aftermath / Interscope)


正直分かっとらん。出た瞬間から今年の音楽メディアで年間ベストを総なめすることが誰の目にも明らかな作品だったし、もっと言えば去年のシングル「i」の時点でもう期待しかなかったから、言葉で、情報として「すごいアルバム」だと分かってはいる。ただ感覚がまだついてきてない。Kanye Westの「My Beautiful Twisted Dark Fantasy」を年間ベスト選に入れた時も同じような気持ちだったけど、まあこういうアルバムの凄さを本当に分かろうと思ったら理解すべき背景情報が多すぎるし今はこんなもんでいいだろう。それでもジャズやファンクの伝統をさらに刷新するようなトラックメイキングとそこに乗っかるパーカッシヴなライミングを聞くだけでいかにこの人が孤高のポジションにあるかは十分嗅ぎ取れる。Wireless Festivalのステージで見せたはにかむような笑い方に、ああこれが"good kid in the m.A.A.d city"か…と感慨を覚えました。生「King Kunta」最高だったぜ、羨ましいだろー。






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#6 V.A. "Fifty Shades Of Grey (Original Motion Picture Soundtrack)" (Republic)


ここんとこ妙に充実したサントラが多いような気がするんだけどこれはピカイチ。映画の方はどうもエロ描写がぬるかったとかで悪評の方を多く聴くんだけど、サントラではそれに不釣り合いなくらいの危険でヒプノティックな色気に満ち満ちててすごい。特に「Crazy In Love」のリミックスはあの曲をよくこう再構築したなと舌を巻く出来。The WeekndとEllie Gouldingの大活躍でシングルチャートでも抜群の存在感があったけど(欲を言うなら「Love Me Like You Do」を歌ったのが作者Tove Lo本人だったらもっとよかった)、Jessie WareやLaura Welshなんて通ぶったとこやStonesやSinatraみたいな大御所も絶妙に配置しててトラックリストの厚みがすごい。これだけ充実したラインナップのド頭に持ってくるのがAnnie LennoxのScreaming Jay Hawkinsカヴァー、という時点でこれは選曲担当者の勝ちでした。







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#7 Tuxedo "Tuxedo" (Stones Throw)


2013年以来のブギーリバイバルがまさか極東の日本でこんな形で花開くとは。このユニットもアルバムもWikipedia英語版に記事のひとつもないくらい国外ではマイナーなのに、よりによってこんなのが日本のラジオでがんがんかかるなんてねえ…。たぶん世界で一番売れたのが日本なんだろうなあ。そもそもフルアルバムが出るだけでびっくりしたのに。「Designer Drug」(これがそもそも2013年)あたりで明らかになったMayer Hawthorneのディスコ趣味をこれでもかと全開にしたアーリー80's仕様のファンクアルバムで、SkyyとかInner Lifeを聴いては「ああこんな時代に生まれたかったよう!」などと喚いていた若いころの自分に聴かせてやりたい。John Moralesに長尺12"ミックスを依頼するなど、他のディスコ再生組がなかなかやってくれなかったところまで丁寧に当時をなぞってみせたのもとても好感でした。






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#8 The Weeknd "Beauty Behind The Madness" (XO / Republic)


この際だからはっきり言っておこう。ミックステープ3部作→1st→これと、作品を重ねるごと、時が経つごとにつまらなくなっている。これが今までと大して変わらないセールスだったらたぶん10枚からは外した。けどこれがバカみたいに売れちゃったもんだから話は別。いやいやいや、売れると思わないでしょこういう人。「こういう人がメインストリームで売れたら面白いのに!」とはめっちゃ思ってたけど、実際にこんなにバカ売れするとこを見せつけられてしまうとすんごい戸惑うね。「Earned It」や「Can't Feel My Face」だけならまだ分かんなくもなかったけど「The Hills」なんか1位取っちゃだめだろこんな曲。ちょっと前まで女性を自宅軟禁(&たぶんクスリ漬けに)した"This〜is〜a happy house〜♪Oh this is fun fun fun♪"とか超怖い歌うたってた人だぞ。いいのかこういう人を堂々とラジオやテレビで流して。

セルアウトと言えばセルアウト。けど、正直この程度の味付けで、逆に言えば、ここまで持ち味を残したままでこんなに売れてしまう余地があったなんて想像もつかなかった。それに「Earned It」が出るまで、「Often」や「King Of The Fall」あたりの単発シングル群も「今までと何が違うんだよ」という感は否めなかったので、ここでテコ入れしたこと自体は大正解。絶対売れたる、という本人の強固な意志(これが一番びっくりした!売れる気あったのかい!)に基づいて、Ariana Grandeとの共演→大作映画の主題歌→自前の曲でNo.1というこれ以上ない綺麗な出世街道をリアルタイムで追えただけで、すごいもの見せてもらったなと思います。来年のRihannaとBig Seanとのジョイント公演、やっぱ見に行くしかないな。







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#9 Rudimental "We The Generation" (Asylum / Atlantic / Black Butter)


この人たちがハウス方向に行ったのがたまらなく愛おしい。いや、もともと1stの時点で、というか1stが出る以前の段階からこの人たちはドラムンベースと4つ打ちをほとんど半々でやってきてて、前者ががんがん売れて名が知られるようになったという経緯だったわけで。それが今回後者の路線を強めに打ち出して、結果アルバムは1位になるもシングルはEd Sheeranパワーがないと売れない、というあまり嬉しくないことになってるんだけど彼らは何を思ってこうしたのか。その決断が「UKアーバンカルチャーの一翼を担う存在である」という自覚から来るものであってほしい、と思います。ダンスミュージックはいつだってストリートのものだから。Andy CやDJ Freshみたいなサイバー寄りのDnBが嫌いというわけじゃないけど、僕はやっぱりこういう土埃を巻き上げながら響くようなマットな音の方が愛おしい。





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#10 Fall Out Boy "American Beauty / American Psycho" (Island / DCD2)


もう何年も何年も何年も言い続けてるけど、ギターロックというものがおよそメインストリームのヒットチャートからほぼ絶滅しかけたこの世界。そんな今の時代に、こういう曲調で全米Top10シングルが出せる人なんて誰がいるよ、と考えたときに、今のFall Out Boyを絶対に見過ごしちゃいけないはずなんだよ。何やってんの世界のロックメディア。「売れた」、ただこの事実だけでとりあえずリストアップする価値がある。

2007年の全盛期、某氏の言い放った「今一番過大評価されてるバンド」というコメントに笑い、大いに頷きました。およそロックというものに興味がなく、ましてその下のサブジャンルのエモなんて知ったことかという感じで、とりあえずやたらヒットチャートに登場する若者好きするバンド、くらいにしか思ってませんでしたよ。登場時点で「エモブーム末期に出てきた異形」と見なされて古参エモファンからは相手にされず、ロックファンからはロックとすら認められるか怪しい扱いで、やがて人気も落ちて活動停止。ところがなぜか2年前にひょっこり復活、Patrick Stumpは激太りからいつのまにか激ヤセイケメン化し、気が付いたら同業でトップ争いをしてたMy Chemical Romanceはじめエモ連中が全滅するかエセEDM化する中、こいつらだけまだ当たり前のような顔してギターロックやっててきちんと現役のヒットメイカーです。しかも昔の焼き直しじゃなくてちゃんと彼らなりに進化もしてて。こういうの、同世代としては無性に応援したくなる。




以上Groove Cruiseの選ぶ2015年アルバム10選でした。
10枚分書き切ったの何年ぶりだー!!
posted by Skedge at 07:18| Comment(0) | 年間ベスト選考 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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